倒れた女性の肩を揺さぶると女性は「ううん……」と、声をあげてうっすらと目を明けた。


よかった、気絶してただけだった。


ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、良介は女性の目が灰色になっていることに気がついた。


それは英也たちと同じ目の色だった。


「あれ、私……」


女性が呟くと同時に良介と視線がぶつかった。


その瞬間女性の両手が良介の首に伸びてくる。


咄嗟のことでよける暇がなかったが、間に稲荷が入り込んで女性の手をはたいていた。


「逃げなきゃ!」


稲荷に手をつかまれ、非常階段を走って降りる。


カンカンカンと2人分の足音が響いて来る中、女性は屋上からジッと良介のことを見ていたのだった。