☆☆☆

ジャリジャリと石を踏む音が聞こえる。


あたりはとても静かで本当にこの町にはお正月がないのだなと感じて、少し寂しくなった。


「これで、お別れです」


前を歩いていた稲荷が立ち止まった。


良介も同じように立ち止まり、小さな鳥居を見つめる。


「こんな鳥居、最上稲荷にあったっけ?」


「これは特別な鳥居です。神の使いが使う道とでも行っておきましょう」


こんなに便利な道があったなんて、知らなかったな。


「じゃあ、そろそろ行くよ」


事件はすべて解決した。


あまり長居していると帰り辛くなってしまう。


「本当に、ありがとうございました」


稲荷が深々と頭を下げる。


なんだか恥ずかしい気分になりながら、良介は鳥居の前に立った。


ここをくぐればもとの世界だ。


こっちの世界に来ることは、もうきっとないだろう。