よかった。


本当によかった。


これで役割は終わったわけだ。


そう思うとホッとして、だけど少しだけ寂しい気分にもなった。


最後になにかひとつできないかな。


ちょっと余計なお世話かもしれないけれど。


「貸して」


良介はそういって稲荷からキツネのお面を受け取ると、茂みから姿を現した。


そして大きな声を上げる。


「みんな! この町のお寺や神社のことを忘れないで!」


良介と英也と大輝の3人が同時に立ち止まり、振り向いた。


「忘れないで!」


もう1度そう言い、良介は3人へ向けて大きく手を振る。


「君は……」


お面の割れ目からのぞく目を見て一瞬良介の表情が変わった。


しかし次の瞬間、キツネのお面をかぶった彼は背を向けて走っていってしまったのだった。