イルミネーションを一通り見て回ると、目の前にあの「運命の扉」が見えてくる。あれが話題になっていた扉か……。幸い、今は誰もいない。

「へえ、テレビで見るより綺麗だな〜」

そんなことを考えながら、俺の手はドアノブにかけられていて、何も考えずに開けてしまう。その先には誰かがいて、「ヤバい!」って思った。絶対、「あなたの運命の相手です!」とか周りが言うに決まってる。

終わった、って思ったしまった。でも目の前にいたのは琴葉だった。お気に入りだと友達に話していた赤いマフラーを巻いて、ココアブラウンのコートを着て、それでも寒そうにしていたから、一歩前に踏み出していた。

「寒がりのくせにそんなペラッペラのコートじゃ、風邪引くぞ」

羽織っておけと俺のマフラーを差し出す。琴葉は顔を真っ赤にしながらも、受け取ってくれた。

「琴葉、友達と映画じゃなかったのか?」

「思ったより早く帰ることになったから、イルミネーション見に行こうと思ったの」