「ご、ごめん!」

慌てて謝ると、胸がギュッと音を立てる。ぶつかったのは偶然にも琴葉だった。廊下に落ちている琴葉のスマホを拾うと、そこには街に毎年飾られるイルミネーションの記事が映し出されている。確か今年は、「運命の扉」とか言う新しい企画があるんだっけ?

「スマホ、ありがとう」

毎年街を彩るイルミネーションのことを思い出していると、スマホを琴葉が取る。手を差し伸べるつもりだったのに、琴葉は自分で立ち上がってしまっていた。ああ、何やってんだ俺……。

「イルミネーション、みんなで見に行くの?」

せっかく話せたんだから、この時間を大切にしたい。俺が訊ねると、琴葉はゆっくりと俯いていった。

「……行かないよ。友達とその日は映画を見て、買い物して過ごす予定。イルミネーションなんて、カップルとかで見に行くものでしょ?」

そう言って琴葉は俺に背を向けて歩いていくが、さっきの言葉が嘘であることを俺は見抜いていた。本当は琴葉はイルミネーションが見たいんだ。