「……どうせ俺なんて、相手にされてないよ」

トイレ行くからと言って、教室から逃げるように廊下に出る。教室とは違って暖房の効いていない廊下は寒い。

琴葉とは、家も隣同士だし、幼稚園から高校までずっと一緒だ。クラスだってほとんど離れたことはなくて、小学生の頃はよく一緒に帰って、よく一緒に遊んでいた。

でも、男女の幼なじみあるあるで、歳を重ねるごとにだんだん距離ができて、今では少し話す程度だ。昔の琴葉はよく知っているのに、今の琴葉のことは、幼なじみだというのに全然知らない。きっと彼女にとって、俺はモブの幼なじみってところだろう。

(まあ、泣き虫で頑張り屋なところは変わってないよな)

人一倍頑張って、でもちょっとしたことで傷付いて誰にもバレないようにこっそり泣く。そんな変わらない琴葉だから、今でも好きなんだろうな。

そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、前から小走りでやってきた誰かとぶつかる。俺はよろけただけだけど、相手はスマホを落として尻もちをついてしまった。