「そばにいたのに白蘭の身に何があったのか知らないというのか」


ふっと口元をゆがめ笑う月影。


「教えてくれ月影。何があった」

「…いいだろう。記憶水晶の間で私は白蘭の魔宮での記憶を見た」


記憶水晶の間…天界にしかない特別な場所だ。


「記憶には一族を残虐され孤独の中耐える白蘭がいた。そして病に苦しみ死期が迫ると独りで忘却湖に飛び込むことを選んだ」


「…」


「人間界で運よく見つけられたが出会った時、白蘭は血まみれで羽根も無く虫の息だった…。人間の姿になり治るのに何年かかったか、お前にわかるか?」


忘却湖に飛び込めば体が耐えられず死に至る。だが、白蘭はそれに耐えたのだ。


白蘭の痛みと苦しみを想像し紅蓮は涙を流した。