活発に動く人々を見て、店をみて、その街に自分も溶け込めているような気がした。


ああ、白蘭。これがそなたの愛した人間界なのだな。


なんと美しいことか。


歩いていただけなのにもう日が傾いている。


人々も店をしまい、あんなに賑わっていた街も静かになりつつあった。


夕日が出ている。人間界も魔界と同じような美しい夕日なのだな。


顔をあげるとよく知った後ろ姿があった。


「白蘭」


いや、いるはずがない。何度、虹彩樹の庭や岩場で白蘭の幻覚を見たことか。今回も幻覚に違いない。


そうだ。違う。きっと違う。


だが、その女が振り向いたときに確信した。


「…白蘭」