「ふふっ。とことん八咫烏一族の黒い羽には程遠いわね」
白蘭の羽を斬った時のあの感触がたまらなく恋しい。
何度殺しても足りないくらいだ。
白くなったということは、この羽も寿命がきているのだろうか。
「美しい白だけど、もう血で真っ赤ね」
小さい頃、紅蓮が岩場で自由に飛ぶ姿を見て美しいと思った。
自分も一緒に飛びたいと侍女に言うと私は狐だから羽では飛べないと言われた。
飛行術ではとても鳳凰には追いつけなかった。
何度も追いかけたが結局紅蓮は一度も振り返らなかった。
それからは羽がある種族を見るだけで腹が立つ。
すべての羽を切り落としてしまいたい。
「蘇芳、璃桜、羽の生えた侍女を捕まえてきなさい。…羽を斬りたい気分なの」
その日、隠し部屋からは女の羽を斬る音と悲鳴が交互にこだました。


