「もう奴には会わないでほしい」

「え?」

「そなたが心配なのだ。また傷つけられないか」

「記憶がないから、あんまり自覚がなくて…でも会わないように気を付けるわ」


月影にそういい笑いかけると、月影も笑った。


「さあ、食事にしよう。せっかくだから白蘭が作ってくれた饅頭を食べよう」

「月影のには劣るからあんまり期待しないでよね。」

「そんなことはない」

「そうだ!街について色々と教えてくれない?」


月影と饅頭を食べながら街について色々と教えてもらった。


月影は天界の者だから基本人間とは関わらないらしく薬も顔を隠して売りに行くと、あとは店についても教えてくれた。


歌舞伎茶屋が一番のお気に入りだそうだ。


月影の話は初めて聞くことばかりで楽しい。でも心の隅では、あの黒服の男がちらついていた。


私を傷つけた男。なのに、あんなに優しく私の名を呼んだ。


あの人は誰なんだろう。名前はなんていうんだろう。


そう思っていた。