「家の中に」


月影にそう言われ私は頷いた。


「白蘭!」


黒服の男に名を呼ばれて家に入るのをためらった。


「…お前がその名を呼ぶなっ」


そして月影が初めて私の前で怒りの声をあげた。


「白蘭…ここは私に任せて家の中に」

「でもっ」


その人は記憶をなくす前の私のことを知っているのかもしれない。


「…頼む」

「…ええ」


月影に言われては言うことを聞くしかない。

家の中から、私は二人の様子を見ていた。


どうやら二人は知り合いみたいね。何を話しているのかしら。


声は聞こえるが内容まではわからなかった。

話を終えたのかしばらくすると月影が家に入ってきた。