月影の声に気づいたのか隣の牢にいた氷輪がガシャンと大きな音を立てて鉄格子にしがみついた。
「兄上!兄上なのですか!?」
「…氷輪か」
天后の牢から離れ隣の牢を見た。
牢に入れられる前に神の杖刑を受けたのだろうか。額と背中は赤く血で滲み、立つのも辛そうだ。
「兄上!母上をお助け下さい!!兄上の話なら父上は聞いてくれるやもしれません!」
「…」
「兄上!なぜ何も言ってくれないのですか?母上を助けてください!」
「なぜだ…?」
「え?」
「なぜ助けねばならない?天后は罪を犯した。罰は受けるべきだ」
「少し財宝を民から搾取しただけでしょう!?謀反ではありません!斬首刑は重すぎます!」
「少し…か。その少しの財宝を得るためにどれだけの民が犠牲になったのか、お前にわかるか?」
月影は呆れたように笑うと言葉を続けた。