「天野川様、お席に案内させて頂きます」
「奥様、お荷物お持ち致しますね」
「えっ!? あ、ありがとうございます……」
まるで旅館みたいなそのお店は、雰囲気も良くてなんだか馴染みやすいような気もした。
「いつものヤツを二つ頼む」
「かしこまりました」
いつものヤツ……?って、どんなのなんだろう。
「ここの料理はとても美味いんだ」
「そうなんですね」
どんな料理なんだろう……。とても楽しみだ。
「どんな料理、なんですか?」
「それは来てからのお楽しみだ」
ええ、そう言われるとさらに気になるのに……。
「大翔さん、ヒントください」
「ヒント? そうだな……。ヒントは、俺が一番好きな食べ物だ」
大翔さんの一番好きな食べ物……? ええ、分からない。
なんだろう?大翔さんの好きな食べ物って……。
「まぁまぁ、そんな焦るな。そのうち来る」
「……はい。分かりました」
そしてその10分後。
「天野川様、大変お待たせ致しました。すき焼きセット、お持ち致しました」
「ありがとう」
ええっ!? す、すき焼き……!?



