てっきりこんな平凡な女との結婚なんて、スリーデイズの社長にそう簡単に認めてもらえる訳はないと、思っていたのだけど……。
「由紀乃さん。息子のこと、よろしく頼むよ」
「……は、はい。こちらこそ、よろしくお願い致します」
案外あっさりと、認めてもらえたようだ。
だけどあまりにもあっさりと認めてもらえてしまったわたしは、意外すぎて本当にいいのかな?と思ってしまった。
「由紀乃さん、君は結婚したら天野川家の一員になる。 何か困ったことなどあれば、いつでも遠慮なく言ってくれ」
そう言われたわたしは「ありがとうございます、天野川社長」と返事をした。
「由紀乃さん、せっかくだから息子に我が家を案内させよう。 ゆっくりしていきなさい」
「ありがとうございます。天野川社長」
「社長なんてやめてくれ、堅苦しいよ」
そ、そう言われても……。わたしにとっては、天野川社長なのだ。
「親父、由紀乃に屋敷を案内してくる」
「ああ。ゆっくり案内してきなさい」
そして案内してもらった天野川家の屋敷は、とても広すぎて、それはまるで大きな迷路みたいだった……。
さすがに次元が違いすぎてヒビってしまったことは、天野川さんには言えなかった。



