って……。なんでわたし、こんなにムキになっているのだろうか……?
「顔真っ赤になってるぞ?由紀乃」
「そ、それは天野川さんがっ……」
【それは天野川さんがわたしをからかうから】だと言おうとしたのに……。
その天野川さんの整っている顔が、今度はわたしの目の前にあるのだった。
頭が混乱しているせいか、状況を読み込むまでに少し時間がかかったけど……。
「ごめん。由紀乃のそんな顔見たら、本当にキスしたくなった」
「え、えっ……!?」
わたし……。本当に天野川さんと、キス、してしまったみたいだ……。
一瞬のことだったから、すぐに分からなかったんだ……。
「じゃあな、由紀乃。また連絡する」
そう言って天野川さんは、わたしの頭を撫でると、キラキラとした笑顔を向けて駅の方へと消えていった……。
「……どうしようっ」
キス……してしまった! まだ結婚してないのに、キスされてしまった……!
だけどこの心のどこかで、イヤだという気持ちはないような気もした。
このよく分からない不思議な感情に、わたしは頭を悩まされた。



