「もちろんです。 こんな娘ですけど、末永くよろしくお願いします」
「こちらこそ」
こうして挨拶をしてみて、わたしたち本当に結婚するんだなって、改めて感じた。
✱ ✱ ✱
「お邪魔しました」
「こちらこそ。またいつでも、来てくださいね」
「ありがとうございます。 では、失礼します」
家を出る天野川さんを、わたしは「あ、近くまで送ります」と言ってその後を追いかけた。
「天野川さん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ。 由紀乃のお母さんは、優しい方なんだな」
「そう、ですか?」
天野川さんの隣を歩くだけで、妙にドキドキして緊張してしまう。
だってこんな住宅街に、スーツを着てビシッと歩いてる人がいて、しかもみんなにジロジロと見られているのが余計に緊張する。
「由紀乃も優しいからな。そこは母親ゆずりなんだな、きっと」
「そうですかね?」
「そうだ。 由紀乃の結婚、喜んでいたからな」
「はい。……すごく嬉しいんだと思います」
わたしにはそんなっ気がなかったのを、相当心配していたからな……。
これで安心なのかもしれない。



