【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに幸せと愛を乗せて〜


 
 天野川さんにそう伝えると、天野川さんは少し間を空けてからこう話した。

「俺には経験人数なんてものは関係ない。そんなものは必要ないからだ」

「……え?」

「そんなものは過去であって、今見ているのはその先の未来だ。 君が恋愛に臆病になっていることくらい、俺にも分かっている」
 
 そう話す天野川さんの表情は、とても真剣で……。思わずその瞳に見惚れてしまい、目をそらせなくなっていた。

「過去は変えられないが、未来は変えられる。 恋愛するのが怖いと言うのなら、俺で恋愛の練習をすればいい」

 そんなことを言ってくれる人に、わたしは初めて出会った気がする。
 言ってくれる人がいるんだ……そんなこと。

「俺を練習台にすればいいさ。俺ならいくらでも、練習台に使われたって構わない」

「……どうして、そんなこと……」
 
 どうして彼は、そんなことを言ってくれるのだろう……。

「どうしてだろうな。……だけど、無性に君が欲しくなった」

 そんなことを言われたら、何も言い返せなくなってしまう。

「……天野川さん」

 この人は……とても優しい人、なのかもしれない。