天野川さんにそう伝えると、天野川さんは少し間を空けてからこう話した。
「俺には経験人数なんてものは関係ない。そんなものは必要ないからだ」
「……え?」
「そんなものは過去であって、今見ているのはその先の未来だ。 君が恋愛に臆病になっていることくらい、俺にも分かっている」
そう話す天野川さんの表情は、とても真剣で……。思わずその瞳に見惚れてしまい、目をそらせなくなっていた。
「過去は変えられないが、未来は変えられる。 恋愛するのが怖いと言うのなら、俺で恋愛の練習をすればいい」
そんなことを言ってくれる人に、わたしは初めて出会った気がする。
言ってくれる人がいるんだ……そんなこと。
「俺を練習台にすればいいさ。俺ならいくらでも、練習台に使われたって構わない」
「……どうして、そんなこと……」
どうして彼は、そんなことを言ってくれるのだろう……。
「どうしてだろうな。……だけど、無性に君が欲しくなった」
そんなことを言われたら、何も言い返せなくなってしまう。
「……天野川さん」
この人は……とても優しい人、なのかもしれない。



