「なに先帰ってんの?」
「えーっと…、友達と、帰ろうかと」
「その友達はおまえと反対方向に歩いて行ってるけど?」
「うっ……」
先に口を開いたのは黒髪の男──天城 蓮斗。
鋭い視線を向けられて、びくりと身体を揺らした。表情筋があまり動かない分、ヘンに圧を感じて怖い。
「あーあ。うるちゃんとデートして帰る気満々だったのになぁ」
「デ、デートって…」
「なんでかれんもいるしさ。僕、うるちゃんとふたりがよかったのに」
隣にいたブラウンのマッシュヘアー、天城 七斗。
穏やかな口調に柔らかい笑みは、一見優しそうに見えるけれど……多分、ちょっと怒ってる。
「ひとりで帰ろうとしてたわけじゃねーよな。ほら帰るぞ」
「元々うるちゃんはれんとは帰ろうとしてないって。僕と帰ろ?」
「はあ? 俺が先約」
「何言ってんの、僕が先にうるちゃんのこと誘ったもん」
「勘違いやめろ」
「そっちこそ」
両手をそれぞれに捕まれて挟み撃ち。
ああ、まずい。こんなところで喧嘩されたんじゃ目立ってしょうがない。
迂闊に外で一緒にはならないようにしようって決めたはずなのに。



