天城兄弟、お見通し。





スッと指先が伸びてきて、髪の毛をすくわれた。

やさしく耳にかけられて、一瞬だけ頬をかすめた指先にぴくりと身体を揺らした。




……ナナくんの冗談、にがてなんだってば。


どこまでが冗談で、どこまでが本気なのか、境界線があいまいでわからなくなる。



……って。恋も愛もわからないわたしが、ナナくんに何を期待するのって話だけど。




「き、期待なんかしてないから」

「えー」

「ていうか……ナナくんはもうちょっと距離感考えた方がいいからねっ」



ナナくんの手から逃げるように身体を離し、そう言ってキッと睨みつける。



期待とか、だれかの者になるとか。


いくら恋を知らないって言っても、出会ってたかが数か月の相手にほだされたところで、簡単に好きになるほどわたしはチョロくないもん。



「あんまりからかわないで」

「あはは、ごめんね。うるちゃん、かわいいからさ」

「ほら、またすぐかわいいって言った…」




ナナくんが言う「かわいい」は、動物や赤ちゃんに向けるものと同じ。

早くこの温度感に慣れないと……そのうち本当に、キャパオーバーで死んじゃいそうだ。