「───好きですっ」



それは、まだまだ夏が過ぎ去る気配のない9月頭、放課後のことだった。



日直だったわたし。

職員室に書き終えた日誌を届けて、恒例のごとく今日の夕飯の献立のことを考えながらわたり廊下を歩いていると、ふとそんな声が聞こえたのだ。



少し震える、女の子のかわいらしい声。

お昼休みは人手の多い中庭だけど、放課後は利用する人があまりいないから、生徒の間では告白スポットして使われることが多かった。

現に今も、あたりを見渡しても生徒の姿はそう多くなくて。


廊下の死角に隠れて、ひょっこり顔をのぞかせる。




声がするほうに視線を移すと、そこにいた女子生徒と、すっかり見慣れた男の姿が映りこんだ。