やってきたエレベーターに乗り込んだ時、ふわりとナナくんがいつもつけている香水が香った。
モテる男の子がつけていそうな、ムスクの香り。
香りものが得意じゃない蓮斗はナナくんによく「ヘンな香水」って言っているけど、わたしは結構好きだったりもする。
もちろん、蓮斗から香る柔軟剤のやさしい香りも落ち着くけれど。
「ふたりとも、どこか寄り道してきたの?」
「れんが、今日発売の漫画があるっていうから本屋にちょっとね」
「なるほど」
「うるは、今日のごはん何?」
ナナくんとわたしの会話を遮るように、隣にいた弟の蓮斗がエコバックの中を覗き込みながら言う。
手には駅前の本屋さんの名前が印字された袋を持っていて、無事漫画はゲットできたことがわかった。
「今日はねー、肉じゃが」
「…ふうん」
「あ。れん、嬉しそうな顔してる」
「うっせ黙れナナ」



