わたしの家からは車で15分くらいのところにあるマンションが、今のわたしがお世話になっている天城さんの家。
学校までは徒歩圏内にあって、今まで電車で通っていた身からすると、朝起きる時間が30分遅くても遅刻しないからいいなぁって思う。
今日のごはんは肉じゃがにしようと決めて、帰りにスーパーで食材を買った。
エコバックをぶらさげてマンションのエントランスを抜けると────ちょうど今帰って来たらしい彼らの姿が視界に収まった。
「あ、うるちゃん。おかえり」
兄の七斗───ナナくんが、わたしの手からスマートにエコバックを奪う。
「あっ、ありがとう…」
「ん、どういたしまして」
慌ててお礼を言うと、ナナくんは柔らかく微笑んだ。



