恋の終わりは 【恋に焦がれて鳴く蝉よりも・番外編】

 「!!!」

 抗うまもなく、紫月はレイの腕に捉えら
れてしまう。強い腕が、掻き抱くように
自分の背を抱いている。紫月は彼の腕に
困惑しながら、けれど、抵抗することも
出来ないまま、じっと耳を澄ました。

 やがて、レイの声が聞こえた。
 その声は切なさに濡れ、紫月の胸を
強く締め付ける。

 「僕といても、忘れられない?」

 やはり傷ついているのだと、そのひと言
でわかってしまう。紫月は彼の背に腕を
回し、首を振った。
 
 揺れた髪が、彼にそれを伝えてくれた
はずだった。

 未練ではないのだと、そう伝えたくて
も上手く言葉が見つからない。

 「じゃあ、このまま抱いても……いい?」

 その言葉に、その声に、全身が熱を帯びた。
 鼓動が早鐘を打ち、呼吸が浅くなってゆく。
 紫月はゆっくりと身体を離し、そしてレイ
を見上げた。自分を見つめる眼差しは、すでに
狂おしいほどに熱を帯びている。

 紫月はレイの頬に手を伸ばし、言った。

 「いいわ。そうなってもいいと思ったから、
ここに来たんだもの」

 緊張で張り付いた喉から、細い声を絞り
出す。一瞬、驚いたようにレイの目が見開か
れたが、すぐにまた、細められた。

 そうしてその目が、近づいてくる。
 紫月は静かに、瞼を閉じた。

 やがて、温かな息がかかったかと思うと、
怯えるように、柔らかに、彼の唇が重なった。

 包むように優しくレイの唇が紫月を覆う。
 紫月は彼の口付けに応えながら、しがみ
つくようにレイの首に腕を回した。

 それが合図だったかのように、レイのキス
は深くなり、そうして、紫月はソファに押し
倒される。レイの重さが、気遣うように紫月
にのしかかってきた。

 「……はっ」

 激しすぎる鼓動に胸が苦しくなり、紫月は
僅かに唇が離れた隙に息を漏らす。その唇を
割って、レイの舌がぬるりと入り込み、深く、
深く、貪るように紫月を求める。

 愛しているのだと、言われているような
キスだった。なのに、どうしてそんなに
愛されるのか?紫月にはわからない。

 肌を重ねれば、わかるのかも知れなかっ
た。すべてを与え合えば、彼の腕の中で
その理由を知ることができるかも知れない。

 そんなことを思っていた紫月の胸を、
レイの大きな手が揉みしだく。そして、
唇を重ねたままで、急くようにその手が
ワンピースのボタンを外した。着てきた
ワンピースはシャツタイプのもので、
ボタンを外せばすぐに肌が露わになる。
ひとつ、ふたつ、みっつ、と、ボタンが
外され、紫月の白い肌がレイの目に晒さ
れた。

 「……綺麗だよ。紫月……」

 熱に浮かされた声でそう言うと、レイ
はそのまま紫月の首筋に強く吸い付き、
キスの跡を残した。その強い刺激に肩を
震わせた瞬間、どうしてか紫月の脳裏に、
一久の顔が浮かんでしまう。

 「………っ!!」

 彼は自分を向き、悲しげに笑んでいる。

 紫月は、はっと目を見開き、レイの肩
を押した。