君が生きていれば、それだけで良かった。


 今の私については、幽霊と表現するのが最も正しいのだろう。試しに看護師さんの前に立ってみるけど、誰にも認識されない。

 でも、不思議なことに嗅覚はある。独特ののっぺりとした病院の匂いに、なんともいえない温度。激しい色を取り除いた病室らしい視界もあるし、看護師さんとお医者さんの会話も聞こえる。

「保護者の方に連絡はつきましたか」
「それがどうやら、いないみたいなんです。一応会社のほうへかけてみたら、マネージャーの方が来るそうで……」

 看護師さんは複雑そうにしていた。

 私に家族はいない。正確にはいなくなってしまった。