君が生きていれば、それだけで良かった。



 そう思った瞬間、ガタッと音がした。視線を向ければ、私のそばにあった机が倒れていた。

 机の近くにいたのは、私しかいない──誰もいない場所で机がひとりでに倒れたことで、教室がしんと静まり返る。縁川天晴を抱えていた男子生徒も動きを止め、机に注目していた。

「今別に誰かぶつかってないよね?」

「音したんだけど、こわ」

「え、何? 坊主の呪い?」

 男子たちは冷やかしながらも、目の前の超常現象に恐怖を覚えていた。じりじりと縁川天晴の周りから離れていく。やがて教室は静まり返った。

「あかりちゃんの悪口、言ったら許さないから」

 いつの間にか抜け出していた縁川天晴は、胸元を抑えながら周りを睨み、座席に座る。

 結局そのまま、縁川天晴はその日誰とも話さず、学校で一日を過ごしたのだった。

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