君が生きていれば、それだけで良かった。



「あれ、もしかしてあの建物が学校?」

 私は道の先に見えた、四階建ての建物を示した。彼は「はい!」と元気な返事をする。

「結構生徒数多いんですよね、いろいろ芸術科とか音楽科とか、進学科とかあって」

「貴方は何科なの?」

「僕は普通科ですよ。何のとりえもないので。本当は進学科入りたかったんですけど、普通科ですら結構ギリギリだったんですよね。だから進級も危ういくらいで」

 私は仕事で勉強の時間が取れていない。空き時間になんとか詰め込む形だから、人と比べて劣っている。でも、縁川天晴があまりにも偏差値が低いなら教えられることはあるんじゃないかと思った。

 悩んでいると、下駄箱に到着した。

 彼は自分の靴箱を探し、ひとつずつ名前を確認してようやく自分の靴箱を見つけた。

「覚えてないの?」

「まぁ。あはは」

 明らかに誤魔化しの笑みを浮かべてきて、つい怪訝な目を向けてしまう。