君が生きていれば、それだけで良かった。



「えっ……ああ確かに握手会とかライブの時は整えてますけど……生きてる分にはいいかなって……あっでも、今目の前にいるんですよね……き、緊張してきた」

 彼は私の言葉を別方向に受け止めたのか、顔を青ざめさせた。なんだか致命的に間違えられている。

「もうさ、これからは自分の為にお金使いなよ」

「そんなことありませんよ! これからも俺は推し続けますよ! 一生! 次のライブに向けてお金もまた貯めますし!」

 縁川天晴は、長い前髪をたらしながらも、屈託のない顔で言ってのけるせいで、どう返していいか分からない。

「あっ、寝るときはこのべ、ベッド使ってください! や、疚しい意味は当然ありません! 俺はえっと廊下とかで寝るので!」

 黙っていれば彼は効果音がつきそうな挙動でベッドをすすめてくる。私は首を横に振った。

「ある日突然自分の家族が廊下で寝たら怖いでしょ。普通にベッドで寝て。私は適当にしてるから」

「推しを適当に寝かせるなんて、お、オタク失格ですよぉ!」

 縁川天晴は泣きつくように首を横にふる。彼は果崎あかりが絶対なのだろう。

 果崎あかりに未来はない。この先なんてない。