君が生きていれば、それだけで良かった。


 事務所の人も言葉を濁したのだろう。私の家族について公表する気は絶対になかったから、よかった。
 安心しながら、私は自分の身体の手首を見る。包帯でぐるぐるにまかれて傷は見えないけど、幽体の私の手首には赤い線がハッキリと見える。

 自殺は簡単じゃない、という書き込みをネットで見た。

 飛び降りも、手首を切ることも、服薬もお勧めしない。

 最後まで苦しいだろうけど首吊りで妥協しておけ、三日ほど誰にも助けられなければ成功する。

 死してなお纏わりつく遺体の状況や、誰にも助けられない完璧な状況を作ること──デメリットの多さに尻込みしていたけど、言うとおりにしておけば良かったなと後悔が浮かぶ。

 ぴくりとも動かない私を見つめていると、やがてばたばたと大きな足音が聞こえてきた。