夜、亜紀のスマホに電話をした。

「亜紀、大丈夫か」

「理樹さんこそ、大丈夫ですか?すみません、私のせいで大変な事になってしまって……」

「亜紀のせいじゃないよ、俺が蒔いた種だからな」

「愛理さんはそれほど理樹さんをお慕いしているんですよ」

「亜紀に慕われるんならすごく嬉しいけど、愛理お嬢さんは迷惑かな」

「理樹さんったら」

「もう少しの辛抱だから、我慢してくれ」

「はい」

俺は亜紀とのスマホを切った。

そう、この状況はもう少しだけと思っていた。

まさか、この時の俺の判断が間違っているとは夢にも思わなかった。

そんな時、愛理お嬢さんは強行手段に出た。

いきなり、俺のマンションに引っ越して来たのだ。

「お帰りなさい、理樹さん」

「なんで勝手に入り込んでいるんだ」

「マンションのオーナーさんに連絡して、まだカードキーを理樹さんから頂いていないと説明すると、なにかとお困りでしょうからと、すぐに渡してくれました」