「あのう、財布落としましたよ」

秀は振り向き、私をじっと見つめた。

「あっ、ありがとうございます」

私の差し出した手から財布を受け取った。

秀は財布を拾って貰ったお礼にと食事に誘ってくれた。

それから付き合いが始まった。

私も秀も奥手で、しばらくの間はプラトニックな関係が続いた。

ある日、秀の住んでいるマンションに誘われた。

いよいよそう言う関係になるのかなと、未知の世界に期待と不安が交差した。
私は恋愛イコール結婚と言う考えで、結婚するまでははじめては捧げないと、ずっと思っていた。

秀はどんな考えなんだろうと興味が湧いた。

でも、秀のマンションでくっついて一緒にDVD を鑑賞しただけで終わった。

それから着かず、離れずの関係が二年続き、私は振られた。

抱きしめられて、はっきりわかった、私は理樹さんが好きと。

「亜紀、旅行でも行くのか?」

私が引いていたキャリーバックを見て秀は尋ねた。

「あ、うん、これからニューヨークへ行くの」