涙が溢れて止まらなかった。

「亜紀、僕と結婚しよう」

「えっ?」

健さんの言葉に驚きすぎて固まってしまった。

「亜紀をはじめて東條ホールディングスのビルで見た時から、気になっていた」

健さんは私を引き寄せ抱きしめた。

「健さん、いけません」

「理樹のことは忘れるんだ」

次の瞬間、健さんは私の唇を奪った。

「いや」

私は健さんを突き飛ばし、部屋を飛び出した。

どうしていいかわからなかった。

マンションを飛び出して、東條ホールディングスのビルに向かっていた。

理樹さん、理樹さん。

私は急に目の前が真っ暗になり、ふらついて車道に飛び出した。

高級車の急ブレーキの音がして、私は気を失った。

気がつくと、広いベッドに身体を横たえていた。

ここはどこ?

その時、部屋のドアが開いて白髪混じりの老紳士が入って来た。

「気がついたかね」

私に声をかけてくれた老紳士はおじ様だった。

「おじ様」

「えっ、もしかして亜紀ちゃんかい」