もし、亜紀が自分の気持ちに素直に行動したら、理樹と結婚出来なくとも理樹と過ごす時間を選んだとしたら、そんな事を思ったら、居ても立っても居られない気持ちになり、副社長室を飛び出していた。

エレベーターを待っていると、ドアが開き、そこには亜紀が乗っていた。

「副社長、どちらに行かれるのですか」

「亜紀、大丈夫だったか、理樹に何かされなかったか」

「副社長、何を仰ってるんですか、そんな事……」

僕は亜紀の言葉を遮り、亜紀を引き寄せ抱きしめた。

「副社長、いけません」

僕は亜紀の言葉で我に返った。

「ごめん、亜紀が理樹のものになったらと思ったら居ても立っても居られなかった」

「副社長?」

「食事に行こう」

「はい、お供致します」

僕は亜紀の対応に満足して、満面の笑みを見せた。

副社長は何を考えているのかわからなかった。

社長室に理樹さんと二人になって、気まずい雰囲気になったが、流石に抱きしめられたり、キスされそうになったりはなかった。