それから俺は滝本先生に亜紀の意向を伝えた。

滝本先生は腕を組んで考え込んでいた。

側にいた三船は速攻口を挟んできた。

「東條くん、そんな事したら手遅れになるわよ、真央の時の事忘れたの」

「忘れていないよ、ただ、亜紀の考えもあるかなと思ったんだ、ニューヨークへは十日のスケジュールを組んで旅行を考えている、それからすぐに手術でも間に合うんなら、思い出も残せるし、亜紀の願いも叶えてあげられると思って」

ずっと黙っていた滝本先生が口を開いた。

「出来ればすぐに手術をお勧めしますが、確かに手術をしたら何年かは旅行は無理でしょう、行くなら今かもしれません、でも……」

「十日位進行を止められる薬なんかないんですか」

「あのね、勝手な事言わないで、先生を困らせてるんだよ」

「あやかさん、僕は大丈夫です、そのかわり少しでも体調に変化があったら、この病院を受診してください、僕の大学時代の親友です、優秀な外科医ですから、ちょうどニューヨークにいるんですよ、連絡しておきますから」

「本当ですか、ありがとうございます」

「いいですか、絶対に無理はしない事、そして少しでも体調に変化があったら必ず、受診してください、約束ですよ」

「はい、約束します」

俺はニューヨークへの旅行の許可がおりた事を亜紀に伝えた。