三船が怒っている理由は、俺にはわかっていた。

大学時代、俺は三船から告白された。

俺は真央が好きだったから答えはノーだったのだが、それから必要以上に三船を誘った。

俺は友達として失いたくなかった。

でも、三船にこの時も懇々と怒られた。

「東條くん、もういいから、その優しさがいけないんだよ、私は振られたんだよね、強く突き放さないと、女は期待しちゃうんだからね」

「でも、俺にとって三船は大事な友達だから」

三船は大学を中退し、看護の専門学校へ行った。

「あの時も俺はお前に叱られたな」

「知らない、覚えてない」

「気をつけるよ、亜紀は大丈夫か」

三船は大きく深呼吸をして、看護師の顔に戻った。

「大丈夫よ、でも今は絶対安静だから、自宅で待機してて、何かあったら連絡するから」

「ここにいさせてくれ」

「わかった、じゃ、ここで待機してて」

病院の夜は静かで、恐怖を感じた。

朝の光が差し込んで、夜が明けた。

亜紀はまだ目を覚まさなかった。