真夜中に恋の舞う




「あ、しばらく尋さんが迎えに来るから、車で帰れよ」


「え、いいよ。別にそこまでしなくても、普通に帰れるよ」


「……悪いけど、もう少しだけ付き合って」





犀川くんが眉を下げて、なんだか悲しい顔をする。きっとまた、私が知らない何かがあるんだろうなと思った。

どうせ、教えてくれないんだろうけど。





「……待って、何これ」




と、犀川くんが私のスマホを見て、眉をしかめる。


つられるようにスマホに目を向けると、背を向けたスマホカバーに挟んであるのは、昨日はるちゃんとジョーくんと撮ったプリクラ。



撮った後に入れておく場所がなくて、とりあえずクリアのスマホケースに挟んだのを忘れていた。


まずい、と思ったのも遅くて、犀川くんの眉間の皺がどんどん深くなる。





「あの、これは」

「会うなって言ったよな?」

「はるちゃんが友達になったからって、一緒に誘ってくれただけだよ」

「どうでもいいから会うなって言ってんの。何でわかんねえんだよ」




イライラした様子の犀川くん。私もむかついてしまう。





「だって理由も教えてくれないじゃん!」


「お前のために言ってんだよ」


「意味わかんないよ!犀川くんが何考えてるのかとか、何者なのかとか、全部わかんないのに、何でもかんでも言うこと聞くと思わないで」






犀川くんを睨みつけて、お弁当を片付けて生徒会室を出る。


おい、と呼び止める犀川くんを無視して、教室に戻る。