「行くぞ」
有無を言わさないその圧に従うしかなくて、立ち上がる。
ちらりとジョーくんを見ると、差し出されたのはお店にあった紙ナプキン。
内緒、と唇に人差し指を当てているジョーくんに、受け取った紙ナプキンを慌ててポケットにしまった。
怒っているのか、どんどん歩く犀川くんに、必死に着いていく。
着いていくというか、手首を掴まれているせいで着いていくしかないのだけれど。
「……アイツと何で知り合った?」
犀川くんの低い声。
雨の日に傘を貸してくれたことを説明すると、はぁ、と大きなため息を吐く。
「危機感無さすぎるだろ。変なやつに着いて行くな」
「……でも、ジョーくんは何か、優しそうだったから」
「北区には行くな。もう2度とアイツには会うな。いいな」
怖い顔の犀川くん。
「どうして?ジョーくんは悪い人なの?」
「いいからもう関わるな」
「……嫌だ」
私の小さな抵抗に、犀川くんが眉を顰めて、目を細める。さすが、不良なだけあって顔が怖い。



