「今日は一緒に帰れるよね?」



次の日。そそくさと帰ろうとした私の目の前に立ちはだかる、犀川くん。




「あ、えーと。今日はちょっと、行くところがあって」

「行くところ?」



にこにこしているけれど、目の奥が笑っていない。


「昨日も、俺が連絡するまで連絡してこなかったよね?」

「あ……」

「学校出る時と、帰った時に連絡してって言ったよね?」




王子様スマイルを浮かべている犀川くん。周りから見れば、私たちはにこやかに楽しそうに話しているように見えるのだろう。



確かに昨日、約束したのにすっかり連絡を忘れていた私は、家に帰ってから犀川くんの「家着いた?」「大丈夫?」というメッセージを見て、青ざめたのだった。



「今日こそは大丈夫!連絡するから!」

「だめ」

「……でも、用事ある」

「用事?なんの?」

「……他校の友達と、遊ぼうと思ってて」




犀川くんは、ふーん、と見透かすように私を見る。




「だめ?」

「……わかった。その代わり、今日こそちゃんと連絡して。心配だから」

「はい!ありがとう!」




喜ぶ私に、はぁ、と呆れたようなため息を吐く犀川くん。私の右手にもあるビニール傘を見て、首を捻る。





「今日雨降ってたっけ?」

「あー、うん!ちょっとね」

「へぇ」

「じゃあ、友達と別れたら連絡します!」



親指を立ててグッドマークを見せて、そそくさと学校を出る。


犀川くんはまだ不審そうな顔をしていたけれど。