「もう、ないです」
「そう、よかった」
犀川くんは置いてあって机に腰を下ろして、私もちょこんと隣に座ってみる。
そのまま、窓から校庭のステージの様子を眺める。
「……あれ、ミスコンはもう終わったの?」
「いや、まだやってるんじゃない」
面倒くさそうに答える犀川くん。
ステージを見ると、ミスコンの1位から3位の3人と、ミスターコン2位3位の2人がトークショーみたいなことをしていた。
「え、犀川くんは?こんなところにいていいの!?」
きっと犀川くんは、本来あのトークショーに出ている予定だったはずだ。
「後で怒られるかも」
「え、ていうか、どうやって私を助けに来てくれたの?」
そう言えばあの時、犀川くんはステージの上でインタビューを受けていたはずだ。
「……お前が、急に出ていくから」
少し拗ねたような声。
「え、」
「どこ行くのかと思って見てたら、男たちに連れていかれてて、心臓止まるかと思った」
「っ……」
それで、ステージを飛び出して助けに来てくれたらしい。
なにそれ。ステージから、私を見てたんだ。
それでちゃんと、私のピンチに気付いてくれたんだ。
なんて、ヒーローみたいなんだろう。
本当はヒーローじゃなくて、ダークヒーローなのかもしれないけど。



