男の腕を掴んで捻りあげている、犀川くんがいた。
男は痛い痛いと叫びながら、悔しそうに顔を歪めている。他の2人が犀川くんに殴りかかるけれど、それを綺麗にかわした犀川くんは、次々と男たちを倒していく。
いつの間にか3人は地面に転がっていて、傷ひとつない犀川くんが、その真ん中に立っていた。
この人、本当に、強いんだ。
すごいという気持ちと恐怖が、同時に湧き上がる。
私を振り向いた犀川くんは、私の怯えた瞳に気付いたらしい。
「……怖い?」
眉を下げて、少し寂しそうな顔をした。
はちみつ色の髪、すらっとした長身、嘘みたいに綺麗な顔、床に転がる男たち。
異常な光景だった。
王子様みたいな犀川くんはやっぱり本当に不良で、こういう喧嘩や暴力のある、私とは違う世界に生きていて。
きっと私には想像もつかない何かを抱えている。
怖い。怖いに決まってる。
それなのに、触れてみたくなるのは、近づきたくなるのは、あなたをもっと知りたくなるのは、どうしてなんだろうか。



