10月。文化祭の準備が始まって、最近の犀川くんはなんだか忙しそうだ。
私たちの関係も曖昧なまま、犀川くんに会える機会はかなり減ってしまった。
私たちは結局、付き合っているのかいないのか、私自身もよくわかっていない。
それでも、なぜか毎日下校だけは一緒にしてくれている。
といっても、犀川くんの生徒会の仕事が忙しくて帰りは遅くなってしまうので、私は生徒会室で一緒に待たなければいけない。
毎日放課後は生徒会室に行って、ただいるだけなのも気が引けるから、簡単な作業を手伝ったりもしている。
別にそこまでして一緒に帰らなくても、1人でも帰れるけど……と言ったのだけれど、犀川くんが「え、俺と一緒に帰りたくないの?」と悲しそうな顔をしたから、「一緒に帰りたいです」と言うしかなかったのだ。
そんなわけで今日も生徒会室にお邪魔している、のだけれど。
「犀川くん、ここってどうする?」
「ああ、そこは……」
また、今日もだ。
生徒会副会長の3年生、浅木美和先輩。
恐らく、というかどう見ても、犀川くんのことが好きらしい。サラサラの黒髪ロングヘアに、高い身長。整った顔にモデルさんみたいなスタイルで、ザ・高嶺の花って感じの先輩だ。
毎回、犀川くんと話す時の距離が近い。今日もぐっと顔を近づけて、たまにボディタッチなんかもしながら楽しそうに話している。
そしてちらりと私の方を見て、「何で生徒会メンバーでもないくせにここにいるの?」という顔をする。
私だって心の底からここに居辛いと思ってるよ……!



