ぐっと顔が近づいて、犀川くんの金色の髪が私の顔に触れる。くすぐったくて、それよりも緊張して、ぐるぐるして。近づく唇に、心臓が破裂しそうで。
「……不良の彼氏は嫌だ?」
耳元で喋るから、吐息が耳にかかってゾクゾクする。自然と体が縮こまる。
「不良の彼氏が嫌って、いうか」
「うん」
「……犀川くんにはあんまり、喧嘩とかして、傷付いてほしくないかも」
犀川くんの頬の傷を見て、そう呟く。
「っ……」
犀川くんは一瞬目を逸らして、それから、顔を近づける。唇が、もう少しで触れてしまいそう。
やっぱり待って───、ぎゅっと目を閉じたら、ふっと笑った声がして体が離れた。
「……あんまり男に隙見せんなよ」



