「でも、慣れてるから楽でいいけどな。そんな顔させたかったわけじゃないから、軽く聞き流して。もう立ち直ってるし」



「でも……じゃあ、ご飯とかいつもどうしてるの?」

「外食かコンビニ」

「自分で、作ったりとか」

「考えたことなかったな。そんなに食べ物に興味持ってなかった」

「そうなんだ……」



私が暗い顔をしていたからか、犀川くんがふっと笑う。



「大丈夫だって。ごめん変なこと言って」


「変なことじゃない!犀川くんのこと知れて、嬉しい」


私が勢いよくそう言ったから、犀川くんは少し驚いたように目を見張る。



「あー、そう」

「もっといろいろ知りたい、です」





何だか恥ずかしくなって、語尾が小さくなってしまった。


そんな私の気持ちに気づいているのか、犀川くんはニヤリと笑う。





だめ、この顔は、あぶない。


私の中の危険信号が鳴るのが、少し遅かった。

気付いた時には私はソファーに倒れていて、私に覆い被さるように犀川くんが私を見下ろしている。