「ここ座って。顔見せて」
リビングのソファーに犀川くんを座らせて、消毒と絆創膏を持ってくる。
犀川くんはさっきからずっと申し訳なさそうに眉を下げていて、大人しくソファーに座って待っていた。
「ちょっと滲みるかも」
頬の傷に消毒をつけると、滲みたのか少しぴくりと動く。
「大丈夫?ごめんね、私のせいで、」
「っ、違う。ごめん、俺のせいだ」
「犀川くんのせいじゃないって。ほら、腕も見せて」
腕も顔も手当をして、よし、と立ち上がる。と、ぐう、と私のお腹が鳴った。
どちらともなく、ふっと笑う。
「ご飯、作ったら食べる?」
犀川くんに聞くと、驚いたような顔をする。
「できるの?料理」
「失礼だなぁ、できるよ」
母の手伝いを小さな頃からしていたから、料理は好きだ。休みの日に作って家族に振舞ったりもしているし、なかなか好評なんだから。
それに、今日は両親の帰りが遅いので、元々1人で夜ご飯を作ろって食べようと思っていた。そこに犀川くんの1人分増えたところであまり変わらない。



