「って、腕も怪我してるじゃん!バイクまで運転させちゃってごめんね…」
「かすり傷だよ」
「血出てるもん。私の家すぐそこだから、せめて手当だけでもさせて」
私が真剣な顔で言うと、犀川くんはきまり悪そうに目を逸らす。
「いや、でも」
「大丈夫。今日は親が帰ってくるの遅いから」
いつも強引な犀川くんが遠慮しているから、今日は私が強引に家まで犀川くんを連れていく。
ちょうど両親が、おばあちゃんの家に行っている日でよかった。夜ご飯まで食べて帰ってくると言っていたのを思い出す。
「……じゃあ、お邪魔します」
いつもは家の前まで送ってくれて、そのまま帰っていく犀川くんを、今日は玄関の中に入れる。
少し気まずそうにしている犀川くんが面白くて、それから、家の中に2人きりという事実に緊張してしまっている自分がいた。



