「萌乃ちゃん、大丈夫?何もされてない?」
「私は大丈夫だけど……」
「ごめん、気づくの遅れて……」
さっきまで人形みたいに綺麗な顔で、感情のない表情で男たちと戦っていた彼が、感情を取り戻したように、心配そうに眉を下げる。
見たことないくらい落ち込んだ顔をする犀川くんに、胸がぎゅっと締め付けられる。
そんなに私のこと、心配してくれたんだ……。
「とりあえず、今日は早く帰ろう」
犀川くんに腕を引かれて、バイクの停めてある駐車場の方へ向かう。
私もさっきの恐怖を思い出して、早くこの場から逃げたくて、バイクの後ろで、犀川くんの背中にぎゅっと抱きついた。
帰りの道は、私も犀川くんもあまり喋らなかった。
私たちの家の近くまで着いて、一旦休憩しようとコンビニにバイクを止めた。
「……あ、犀川くん、怪我してる」
さっきは慌てていて気づかなかったけれど、犀川くんの頬に小さく傷がついている。こんなに綺麗な顔なのに。
犀川くんは圧倒的に強くて、余裕で男たちを倒したように見えたけれど、相手は2人だ。さすがに無傷なわけではなかった。



