「どこ行くの?」



走り出したバイク。後ろから声をかけると、「着いてからのお楽しみ」と返って来た。



最初は怖かったバイクもだんだん慣れてきて、頬を撫でる風が気持ちいい。次々と通り過ぎていく景色も車に乗っている時よりよく見えて、何だか楽しい。



目の前には、犀川くんの背中。細いように見えて意外としっかりした肩幅に、腰に、どうしたってときめいてしまう。



学校では真面目な生徒会長で、王子様で、バイクに乗っている姿なんて想像できないのに。

いま目の前にいる犀川くんが本物なんだって、知っているのは私だけなのかもと思ったら、なんだか心がくすぐったかった。





「着いた」

「わ、海だ!」





目の前に広がるのは、春の海。

海水浴のシーズンでもないから、人も全然いない。水面が太陽を反射してきらきらしている。

犀川くんがヘルメットを脱いで首を振ると、金色の髪が水面と同じようにきらきら揺れる。


私もヘルメットを外そうとしたけれどうまく取れなくて、もたもたしていたら犀川くんが私のヘルメットをパッと外して、くくっと笑った。