すらりとした身体に小さな顔。サラサラの黒髪に細いフレームの眼鏡。
伏せた右目の下にある黒子が色気を放っていて、口に咥えられた細いタバコが大人の雰囲気を感じさせる。
そして、彼の周りを囲む治安の悪い仲間たち。
暗いところで撮った隠し撮りのような写真が、その危険さを増している気がする。
妹尾 尋(せのお ひろ)、20歳。
ここ、西区を支配する組織の中心人物……らしい。
まあ、一般市民の私たちには全く関係ない世界の話なのだけれど。それでも、その裏社会の噂くらいは、一般人の私でも聞いたことがある。
この辺りは西区と北区の組織の勢力が強く、その二つの組織は昔からずっと敵対している。
この街でよく喧嘩や事件が起きたりするのも、その関係だとか。
西区よりも北区の方が治安が悪くて、小さい頃は北区のエリアで遊ぶことすら親から止められていた。
そんな危険な人のことを、よく格好いいとか言えるなぁ。私にはわからない。
そんなことを思いながら、アイドルの写真でも見つめるかのように、うっとりしているはるちゃんを見る。



