「ここの流れだけど、逆の方がいいかなと思って」
浅木さんがファイリングされた資料を犀川くんに差し出す。犀川くんはそれを覗き込むように見ながら、私の隣の椅子に座った。浅木さんはその正面に座っている。
「っ……!?」
突然、私の左手に犀川くんの右手が重なった。机の下で、浅木さんに見えないように、私の手を撫でる。
びっくりして犀川くんの顔を見つめたけれど、彼は何事もないみたいに、「たしかにそうだね、そうしよう」なんて正面の浅木さんと、生徒総会の話を続けている。
私は全身が心臓になったみたいに熱くてドキドキしているのに、犀川くんは涼しい顔だ。
「わ、私、帰ります……!」
耐えられなくなって真っ赤な顔で立ち上がると、犀川くんはクスクスと笑いながら一緒に立ち上がる。
「ごめんね、今日は帰るわ。お先に」
「え、犀川く……」
驚く浅木さんを置いて生徒会室を出る犀川くん。戸惑いながらもそれについていく。



