信じられなくて、違って欲しいと祈りながら彼を見るけれど、こんな綺麗な顔の人、他にいるはずがない。
ガードレールに座っていた彼が、ゆっくりと顔を上げて、その瞳に私を捉える。
バイクのエンジン音が、私が息を飲んだ音を掻き消す。
真っ暗な中に、煌々と光るコンビニの明かりが、彼の姿を背中から照らす。
「あー……、バレちゃった?」
タバコの煙をふ、と吐いて、妖しく笑う。
真っ黒なパーカーのフードを被って、指にはゴツいシルバーのリング。
彼の口から吐き出された煙が、ゆっくりと暗闇に溶けていく。
大きめのパーカーのフードからのぞく、彫刻みたいに綺麗な顔。切れ長の瞳は、夜の闇を映して吸い込まれてしまいそうだ。
目が、離せない。
ドクン、ドクンと脈打つ心臓が、恐怖のせいなのか、それとも彼に見惚れているせいなのかはわからない。
息が、苦しい。
「……なんで、犀川くん」
「ごめんね、不良嫌いなんだっけ?」
眉を下げて綺麗な顔で笑う犀川くん。
ああ、全部嘘だったんだ。揶揄ってただけなんだ。王子様じゃなかったんだ。私のこと好きなわけじゃ、なかったんだ。



