「チキンよりそっちのが好き」
「それなら、いいけど……」
ハンバーグが出来上がったので、ケーキと一緒にテーブルに並べると、それなりに豪華な食卓になった。
犀川くんの家で、犀川くんにご飯を作っているなんて、結婚してるみたいな気がして照れてしまう。
犀川くんと結婚したらこんな感じなのかな、なんて、夢みたいなことも考えてしまった。
「萌乃、こっちおいで」
向かい合ったところに座ろうと思っていたら、犀川くんがソファの隣に私を呼ぶ。
部屋に2人きりという状況も相まって、緊張しながら隣に座る。2人掛けソファは思ったよりも狭くて、距離をとって座ったつもりでも肩と肩が触れ合う。
触れた部分に意識が集中して、熱い。
犀川くんの匂いが、する。犀川くんの声が、すぐ近くから降ってくる。
この部屋でいつも犀川くんは生活していて、ここには私たち2人しかいない。
すべての要素が私の鼓動を速くする。



